• 運気の集まる樹 地蔵院のタブノキ

地蔵院のタブノキは幹周六、一メートル、樹高二十メートル、推定樹齢は約六百年です。
標準和名「椨(タブノキ)」はクスノキ科の常緑高木で、古くは『日本書紀』に造船材料として讃えられているほか、樹皮を染料、葉を線香、実をロウの原料や食料にしたということからも、お寺向きな材料を生み出す有用な樹木です。
このことから思い描くのは、昔の地蔵院の住職が前記の有用性を認識し「今の位置に植えられたのかもしれない」ということですが、これは証明のしようがありません。
椨という名称は、この木が昔、霊が宿る木とされていたことから「霊(たま)の木」と呼ばれ、それがしだいに、「たまのき」から「たぶのき」に変化していったことから「椨」と呼ばれるようにになったと言われています。
また「椨」という漢字は、「木」ヘンに「文書や財宝を入れるくら」または「物事がたくさん集まる所」という意味を持つ「府」と書いて「椨」となることから、たいへん縁起の良い意味を持つ木です。
更に、日本最古の歌集『万葉集』において大伴家持は「海岸近くで根を延ばした椨の古木が、なんと神々しいことか」という歌を詠んでいます。
地蔵院の椨は、本堂の後ろに聳え立ち、本堂やご本尊、そして多くの御霊を厳かに見守って下さっている雰囲気に溢れていて、前記のさまざまな由縁を思い起こさせる存在感を誇っています。